犬が少し怖い少年と天真爛漫なももきちのお話

目次

甥っ子のこと

私には今年11歳になる甥っ子がいる。

妹が「妊娠した」と相談してきたときからほとんどの時間を一緒に過ごしてきた。
彼が赤ちゃんの頃には私は「ゲッパー」と言われたくらい、彼のミルクのあとのゲップ出しがなぜか上手だった。
寝かしつけも上手で「私の気持ちが休まって抱っこしないと寝ない」と精神論的なところまで気をつけたりもしていた。

そんな彼は今同じ都内で暮らしている。
都内とはいえ少し距離があるところなのであまり会えなくなった。
だから私が結婚してから、時々彼だけうちにお泊りをすることがあった。

うちに泊まりに来る甥っ子と子犬のももきち

ももきちを迎えてからすぐ、うちにお泊りしたときのこと。

彼は小さい頃実家の愛犬に噛まれてから犬は好きだけど怖い気持ちが少しあった。

でもはじめてももきちに会ったとき、まだまだ子犬で小さいももきちは「かわいい」と、2人は仲良しになった。
「ももきちは怖くない!!」と嬉しそうに笑っていたのも印象的だった。

そこから何回かお泊りしたときも、別れ際にいつもこっそり涙を流してくれるから「うちがそんなに好きなんだね^^」とほほえましく思っていると「ももきちと一緒にいたい」と言うので、「そっちか!」と突っ込んだこともある。

今年泊まりにきた甥っ子と成犬のももきち

最近彼は学校以外のところでラグビーを頑張っている。
他にも運動の習い事をしているので、なかなかお互いの予定が合わずにお泊まりの回数も減った。

そして今年、久しぶりに彼がお泊まりに来た。
すっかり成犬で9.5キロのサイズになったももきちと会うのは久しぶりで、彼は最初「ちょっと怖いかも」と顔を引きつらせていた。

ももきちはお友達の彼のことを覚えているのか嬉しくてたまらないようで、私たちがいても一切気にしないで彼のことを追いかける。

さらに、マウンティングをしてしまうので私たちは「NO」や「おすわり」での訓練が忙しくもなってしまった。
ももきちにマウンティングされると最初は「痛い痛い」って逃げていたので「堂々とNO!って低い声出して教えてあげて」と伝えると、彼は優しさのある「NO」を低い声で言うようになった。
叱る「NO」と教える「NO」は違うんだと、彼から教えてもらった気がした(でもももきちに効果は持続しない苦笑)

ももきちのことを怖がっているようで一緒にいるのが好きな彼は何度も私に「庭で一緒に遊んでいい?お散歩に行ける?ケージから出して遊んでいい?」と聞いた。

一緒にお散歩に行くと驚いた。
ももきちのリードをしっかり持って一緒に走っていたかと思えば、ももきちに「疲れた?お水飲む?」と水を差し出したりしている。

いつもは散歩のときももきちから合図がない限りあげないけれど、彼は自分から聞いて差し出して、ももきちも答えるようにお水を飲んでいた。
帰り道、一緒に並んで走る後ろ姿が、妙に親友のようでほほえましかったのだ。

ももきちのマウンティングは最後まで改善までは程遠い結果となってしまったけど、腕に引っかき傷を作っても、彼は一度もももきちに対してイライラしていなかった。
ももきちはそんな彼のことが本当に大好きで、ケージから出ていればいつもずっと彼のそばにいた。
弟のような気持ちで見ていたのかな。


そして彼は家に帰っていった。
降りる駅で寝過ごして迎えに行った家族や私たちは焦っていたけれど無事に帰れたようだ。

帰った翌日に来た甥っ子からの電話

帰った翌日に彼から電話が来た。
「恥ずかしいんだけど、ももきちにまた会いたくて夏休みの間にまたお泊りに行ってもいい?」と。

在宅で仕事の私は「仕事があるから宿題しながらゆっくりお家でいい?」と聞くと
「ももきちと一緒にいられればいい」と言われてしまった笑

ももきちと甥っ子の不思議な関係

犬と子供は本当に不思議だと思う。

犬が少し怖かった彼に対してももきちがしたことといえば、何よりマウンティングだ。

ももきちは自分の爪を噛んでしまうので尖ったところもあって、少し肌にあたるだけで引っかき傷ができるけれど、彼は引っかかれても、ももきちに対して怖い気持ちを持たなかった。

ももきちは彼のことを見下していたのかもしれないけれど、ずっと追いかけて、よく顔を見て、ずっと彼のそばにいた。

彼がももきちに怖さを感じなくなったのはそれを「愛情」とちゃんと受け取ってくれたからだろうな。

少し前にうちに泊まったとき、私がももきちを叱ったことがあった。すると彼はそれを見たあと私に「怒ったら一緒に遊んであげてね」と静かに言った。

自分がしてほしいことを、ももきちに対して考えられる彼を私は素直にすごいと思った。

彼は決して器用じゃないし、モテるタイプでもないと思う。

でも私の周りにいる人達はなぜか彼のことが大好きで、親身に彼に寄り添ってくれる人が多い。

そのくらい、彼には味方がいる。

私はその理由は彼の大きな優しさにあるんだと思う。

それがきっとももきちとも仲良くなれた理由のひとつなんだろうなとも。

ももきちと彼はきっとお互いを理解できているような信頼関係があるようにも思えた。

私は甥っ子にとってももきちがいる我が家が二番目の「帰る家」になればいいなぁと願い続けている。

救いになる場所はいくつあってもいいのだ。

今日はそんな彼の誕生日。

いつか彼が大きくなったとき、あなたのママがどれだけあなたを好きでいるのか、そしてあなたが当たり前にしている中にどれだけママの愛情が染み込んでいるのかを伝えたいと思った。

今のまま、強くて優しい男になるんだよ。

また会えるのをももきちと一緒に待っているよ。